不利益不遡及の税法原則への抵触3法
税法の遡及適用は可なれど、課税免除や緩和や繰延といった納税者有利規定に限られ、税負担が過重になる不利益規定に関しては立法無効とされます。
昨年のねじれ国会で予算関連税法は3月中に成立せず、4月末日に成立し、日切れ失効期間の4月初日に遡及されることになりました。
しかし、不利益規定であるため、不遡及原則に抵触することとなる規定が3つありました。
使途秘匿金への40%追加課税
その1つが使途秘匿金課税規定で、日切れ失効期間内に支出した使途秘匿金について課税するとの規定は無効なので、法律公布と同時にその無効を確認する政令も公布されました。
欠損金の繰戻還付中止規定
2つ目が、欠損金の前年への繰戻しによる税金の還付規定が法律にあるのに、それの中止規定を別途作っていたものが日切れ失効になったというものです。
4月30日公布の新法では4月初日に遡及して繰戻還付を中止するとなっていますが、不利益規定ですから公布前期間への遡及部分は無効です。
これについても、同時公布の政令に、この失効期間内に決算日を迎えて確定した欠損金については繰戻還付請求可との確認規定が置かれました。
交際費の損金不算入の日切れ規定
問題は3つ目の交際費の規定です。
日切れ失効期間に開始した事業年度の決算日がこの3月末日です。
交際費に関しての確認規定は政令にありません。法律の解釈はどうあるべきか悩むところです。
いくつかの解釈例が考えられます。
①新法公布前の日切れ期間に支出した交際費は損金不算入規定の対象外になる。
②新法公布前の日切れ期間に開始したこの3月決算期間の交際費の全額は損金不算入規定の対象外である。
③交際費の額の確定する3月末日時点での適用法律で判定するので全1年間の支出交際費が交際費課税の対象となる。
裁判で争うことになるのかも
課税当局は説得力のある解説のもとに見解を示そうとしていませんが上記の③の立場のようです。
しかし、公布が1年近く遅れたとしても、遡及適用可かと問えば③はおおいに疑問になるところで、最終決着は司法の判断と言うことかもしれません。

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