平成27年の成年後見人の不正件数
高齢者の方、中でも認知症になった親御さんの財産管理は、ご親族にとって悩ましい問題です。
この問題を解決するために設けられたはずの「成年後見制度」ですが、着服などのトラブルが多いため、平成22年から最高裁が不正件数を調査しています。
成年後見人(親族含む)の不正件数等(最高裁)
年 件数 被害金額
H23 311件 33.4億円
H24 624件 48.1億円
H25 662件 44.9億円
H26 831件 56.7億円
H27 521件 29.7億円
新聞報道によれば、平成27年の数字は全体数としては、はじめて減少に転じましたが、「専門家」による不正件数が37件(被害金額1.1億円)と過去最高だったそうです。
成年後見人の「専門家」の占める割合は65%(H26)と増えていることもあり、由々しき問題です。
一方で、それ以外の数字が「親族後見人」の着服であると考えると、これもこれですごい数字です。
子が預金等を使い込んだ場合はどうなる
親族後見人と限らず、子が無断で親の預金を使い込むなど着服をすると、民事上の賠償責任、刑事上の業務横領罪(親族相盗例の適用なし)となるばかりでなく、その着服した金員は、親御さんがその子に対して有する「不当利得返還請求権」(本来の持ち主に返還を求める請求権)として相続税の課税対象となります。
たとえ、相続の発生による「混同」により請求権が消滅することとなっても、税金の問題は残ってしまうということになります。
裁判所の法的解決も「不当利得返還請求」
また、このような問題が相続人当事者間で解決できない場合には、遺産分割調停で争う方法と、訴訟(不当利得・不法行為)で争う方法が考えられますが、これについては、家裁では「不当利得返還請求訴訟」により解決すべきとの意向を示しており、「相手方が預金を解約したこと等を認め、今でも一定の額を預かっていることを認めて、そのお金を遺産として分割の対象とすることに同意した場合」には例外的に遺産分割でも取扱うことができるようですが、それに同意しない場合や預かり額に争いがある場合には、この限りではないようです。

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