武富士事件の場合
武富士事件の最高裁判決では、国側逆転敗訴の結果を受けて、加算税、延滞税を含め1,585億円納付していた税金に対し、約400億円の還付加算金を付して、約2,000億円が還付されました。
還付加算金は、国税側からの利子に相当するもので、4%あまりの利率で計算されることになっています。
これは、納税者が税金の追徴を受けたときに、税金の早期に納付してもらうための追徴金の利息の軽減利率と同じものです。
すなわち、納税者にも国税側にも、適正申告納付・適正課税執行を促すものとして制度化されているものです。
巨額な申告否認には即納付の納税者
税務否認を受けると、追徴金の延滞税が大きくなることを回避するため、納税者としては訴訟の結論が出る前でも納税をしておくことが通例です。
その結果、東京都銀行税事件、旺文社事件、ガイダント事件など税額が巨額にのぼった事案で、国側が敗訴になると、巨額な還付加算金が発生しています。
次の巨額還付加算金発生が予測されるのは、武田薬品の移転価格を巡る係争です。
武田薬品のホームページでのニュースリリースによると、更正処分を受けた所得金額は1,223億円、地方税を含めた追徴税額は571億円です。
武田薬品移転価格更正処分事件
武田薬品は、アメリカの同社子会社への製品供給価格が低すぎるとして、大阪国税局から2006年6月28日に更正処分を受けたことに対し、異議申し立てをするとともに、日米二重課税の解消を目的として、国税庁に対し、米国との相互協議申し立てもしていたところでした。
2011年11月04日の武田薬品のニュースリリースでは、国税庁より米国との相互協議が合意に至らず終了した旨の通知がこの日にあったと報じられました。
国内係争の再開
相互協議決裂の結果、いったん中断していた国税局への異議申し立て手続きが再開しているので、遠からず異議決定が出ると予想されます。
アメリカ政府を説得できないまま、国内法人への二重課税を強行することは考えられません。
納付から、すでに5年半経過しているので、国側がこの裁判に敗けると、武富士事件の3分の1程度の規模ながら、約150億円の還付加算金の発生となります。
    

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