微妙に異なる会計と税務の「開業費」
個人でも会社でも開業に際しては少なからず準備費用がかかります。
このような費用を「開業費」といいます。
「開業費」は、会計でも、税務でも、開業年度において一時の費用・損金とすることに問題はありませんが、その支出の効果が開業後にも及ぶことから「繰延資産」として資産に計上することも構わないこととされています。
ただし、この「繰延資産」として計上する場合には、「開業費」の会計と費用の定義に微妙な違いがあることに留意しなければなりません。
会計上は経常費も「開業費」扱い
財務諸表等規則ガイドラインでは「開業費」は、「土地、建物等の賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、支払利子、使用人の給料、保険料、電気・ガス・水道料等で、会社成立後営業開始までに支出した開業準備のための費用」と定義されています。
中小企業会計指針でも「開業準備のために支出した金額」とされ、会社成立から開業までに生じた、開業準備のため直接に支出する費用と理解されています。
法人税では経常費は「開業費」とされない
一方、法人税では「開業費」は「法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」とされ、「特別に支出する」ものに限定されています。
「特別に支出」については、昔の通達では「法人が開業準備のために特別に支出した広告宣伝費、接待費、旅費、調査費」を指し、「法人の成立後営業開始までの間に支出した費用であっても、支払利子、使用人給料、借家料、電気ガス、水道料金等のような経常費的な性格を有する費用はこれに含まれない」と示されていました。
これは、法人税の場合、「開業費」は任意償却ですので、期をまたいだ利益調整の道具に使われることを避けるため、「特別な支出」に限ることとしたと理解されています。
現在でも、この内容は解釈として引き継がれ、法人税務では経常費は「開業費」から除かれるものとして取り扱われています。
所得税では「特別」ならば、経常費OK
これに対して所得税では、経常的な費用であっても、その支出が開業準備のために特別に支出したものならば、開業費に計上できるものとして取り扱われます。
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