相続税の基礎控除額の引き下げによって、生前贈与に関心が高まっています。

「暦年贈与サポートサービス」とは、贈与者と受贈者間で贈与を行う際に、暦年課税制度の条件を満たすように、銀行等がサポートするという商品です。

銀行等が、贈与の都度、贈与者・受贈者間の贈与の意思確認を行い、双方の合意がある旨を確認し、「贈与契約書」を作成します。

そして、「贈与契約書」に基づく贈与資金の払戻し・振込を行い、「贈与報告書」を作成し、送付するというサービスです。

この暦年贈与サポートサービスは、契約期間が5年間となっていることから、相続税法第24条《定期金に関する権利の評価》に規定する「定期金給付契約に関する権利」の贈与には該当するのではないか?との懸念がありました。

「定期金給付契約に関する権利」とは、「契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権のこと」とされています。

一定期間にわたり定期的に贈与を行うことが贈与者・受贈者間で契約されている場合には、その契約の時点で、定期金給付契約に関する権利の贈与として、贈与税の課税関係が生じることとなります。

毎年、贈与する場合、基礎控除の110万円以内であれば贈与税はかかりませんが、例えば、「10年間にわたり毎年100万円ずる贈与する」など、一定期間にわたり定期的に贈与を行うことを当事者間で約束する場合は、その約束をした年に「10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利」の贈与を受けたものとみなされます。

この暦年贈与サポートサービスの事前照会について、東京国税局から、次のように回答が示されています。

贈与は、「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」こととされており、贈与者の贈与の意思表示だけなく、受贈者の贈与を受ける意思表示を必要とする双方合意で成立することとされています。

また、贈与による財産の取得時期については、「書面によるものについてはその契約の効力の発生した時」と規定されています。

この暦年贈与サポートサービスでは、その申込みは贈与者が行い、銀行等は、贈与の都度、贈与者・受贈者間の贈与の意思確認を行った上で、その双方合意による贈与契約の成立を証する贈与契約書に基づいて贈与資金の払出し・振込を行うこととしています。

このことから、サービスの申込みによって贈与契約が成立するものではなく、このサービスによる「贈与資金の払出し・振込」は、契約期間中の各年に締結される贈与契約の履行として行われるものであるため、その贈与契約によって効力が生ずるものと考えられます。

したがって、暦年贈与サポートサービスに基づき行われる贈与については、各年に締結される贈与契約の内容に基づき、各年の贈与として贈与税の課税が行われることと解釈できます。

あらかじめ定期的に贈与することについて贈与者・受贈者双方の合意がなされている場合でない限り、暦年贈与サポートサービスを利用した贈与は、「定期金給付契約に関する権利」の贈与に該当するものではないと考えられます。

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