譲渡企業の帳簿上の価値である純資産を上回る額で企業を買収した際、その差額分を会計上の資産として計上する「のれん」代が国内企業で膨らんでいます。
2018年3月期決算までに東証1部上場の主要225社のうち7割にあたる約150社がのれんを計上し、その額は計24兆円と、5年前に比べ約9兆円増えました。
「のれん」の意味するものとは
「のれん」は、ブランドイメージなど帳簿にない付加価値と説明されますが、具体的には、企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件の良さ、特殊の製造技術、優良な取引関係、市場の独占性などを総合した、将来にわたり他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産価値であるとされています。
のれんの会計処理
のれんは時価評価替え後の純資産額と買収価格の差額分です。純資産額より買収価格が高い場合にはその差額をのれんとして資産計上し、日本の会計基準では20年以内の一定期間で費用として償却します。
一方、純資産額より買収価格が低い場合にはその差額を負ののれんとして生じた事業年度の利益(特別利益)に計上します。
減損リスク
財務諸表上は業績の芳しくない企業でも、のれん代によって高値で売却できる場合があることから、譲渡企業にとってのれん代はプラス材料となります。
一方、譲受企業は将来的に多額の損失を被る可能性があることに留意が必要です。
近年では、東芝が買収した米原発メーカーで7,000億円を超える巨額の損失を出して経営危機に陥りました。
また、日本郵政は買収した豪物流大手に係るのれん等の減損損失の発生により赤字に転落しました。
買収市場が活発化する中、人気の企業は買収価格が高騰する傾向にあります。
後々一気に巨額の損失を出すことも考えられるため、高値づかみを懸念する声が上がっています。
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