企業において、一般に上司は労働者に対して・管理・監督・仕事の割り振り・教育訓練・非金銭的動機付け(ほめる、叱る)マネジメント機能を果たしています。

ここでは、一橋大学経済研究所が2013年に発表した、日本を代表する自動車販売会社の人事・取引データを用いた実証的研究成果から得た店長選抜の重要性について述べます。

店舗業績を伸ばす店長とは

この研究における主な発見は次の4点です。

①店長は店舗業績に対して大きな影響力を持ち、平均的店長と比べて、「悪い」店長を「良い」店長に置き換えると、店舗の新車獲得利益は約14%向上する。

②店長配置の基本パターンは「小規模店舗から大規模店舗へ」である。

また、業績が悪化している店舗には、店舗経験の長い店長が配置される。

③若い店長や店長昇進前に新車販売以外の経験も有するキャリアの幅の広い店長が、店舗業績を伸ばしていた。

④店長の学習効果はあまり重要ではなく、店長を教育して生産性を上げるよりも「良い店長」を正しく選抜することがより重要である。

また、「営業社員の平均年齢が比較的低いため、若い店長の方がコミュニケーションを取る上で有利であり、チームとしての一体感を醸成して助け合いが活発になるという効果が生じている可能性があること」を示唆しています。

経営者・管理者の留意点

この自動車販売会社の人事担当役員は「年に数回実施するチームインセンティブ(店舗間・店舗内課間のコンテスト)を行った結果、勝ち組のパターンは、営業スタッフと上司の年齢層が開いていない、という特徴がうかがえ、微妙に年齢の距離感が影響しているのではないか」と述べており、前述の研究結果を裏付けています。

店長に昇進するまでのキャリア形成を計画的に行い、幅の広いキャリアを持たせること、店長と部下の課長・営業スタッフの年齢層を近づけ、コミュニケーションギャップを少なくすることに留意しながら、目標管理による経営貢献度評価を基準に店長を選抜することが重要と言えましょう。

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