最近、上場会社で財団株主がじわり増加していると新聞・専門雑誌等が取り上げています。
この財団ですが、公益財団・社団や非営利型の一般財団・社団(以下、財団等)で、多くは創業家一族が主体となって運営されています。
財団等の株主作りの手法
報道によれば、多くの事例は、会社が保有している自社株の数パーセントを創業家が理事長を務める財団に1株1円で割当てる手法のようです。
その場合、1円は有利発行になるため、株主総会での特別決議が必要となります。
例えば、一般財団法人小林製薬青い鳥財団の設立にあたっての内容はこうです。
市場では1株5,000円相当の株を1円で850,000株割り当てるものです。
通常の価額での割当てであれば、42億5,000万円ですが、財団等は、なんと850,000円で取得できるというものです。
もちろん、この手法に既存株主が必ずしも賛成というわけではありません。財団による社会貢献もありますが、一方で財団は会社の大株主として存在し、経営方針の決定にも大きな影響を及ぼす存在にもなっています。
機関投資家からは、これでは財団本来の役割より、創業家の支配または会社の安定株主対策の隠れ蓑になっているとの危惧の声も聞かれます。
税務上の取扱
仮に、1株5,000円株を1円で発行会社が保有する自社株を財団等以外の法人に割当てをした場合の課税関係ですが、割当てを決議した会社にとっては、自社株の処分は資本等取引にあたりますので、たとえ、1円で割り当てても課税関係は生じません。
一方、1円で割当てを受けた法人は、1円と5,000円の差額、4,999円が受贈益となり法人税が課されることになります。
しかし、割当てを受けた法人が財団であれば、財団は収益事業(34業種)から生ずる所得のみに対して法人税が課されることから、このような株式の引受け行為は、収益事業にはあたらないので課税関係は生じないことになります。
また、財団等の運営原資は、株式の配当によってなされますが、配当金も収益事業にあたりませんので課税は生じません。
なお、公益以外の財団等にあっては、配当金は源泉徴収され、かつ、すべて非収益事業であれば、申告義務がありませんので、源泉税は取られたままです。
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