国庫に帰属するのが原則
相続人が存在しない場合には、その相続財産は国庫に帰属するのが原則です。
しかし、故人(被相続人)と長年同居していた内縁の配偶者のように、被相続人と一定の関係のある人を素通りして、国庫に財産が移行しては、被相続人の意思に反し、不合理だという見方もあります。
特別縁故者への相続財産の分与
そこで、民法は、相続人が存在しないことが確定し、かつ、被相続人の特別の縁故があった者の申立に対し、家庭裁判所が相当と認めるときは、相続財産の全部または一部を与えることを認めております。
特別縁故者とは
①被相続人と生計を同じくしていた者
長年同居していた内縁の配偶者、事実上の養子あるいは養親、継親子、子の妻がこれにあたります。
②被相続人の療養看護に努めた者
被相続人と生計を共にせずとも、被相続人の療養看護に努めた親族、隣人、知人等がこれに該当します。
家政婦や看護師でも報酬以上の多大な献身があれば、これに該当する可能性もあります。
③その他被相続人と特別の縁故があった者
①②に準ずるような密接な関係で、被相続人が遺言していればその者に遺贈していたであろうと考えられる程度の者がこれに該当します。
他人でもよく、自然人だけでなく法人でも認められます。
例として、被相続人が経営者として私財を投じて財政的基盤の確立に努め、指導理念や行事に関与して、その発展に大きく寄与した学校法人、や養老院があります。
手間と時間がかかり、微妙な判断になることもある
先に相続人が存在しないことを確定させるために、利害関係者または検察官が相続財産管理人の選任を申し立てます。
管理人による管理業務がなされた後、家裁から相続人捜索の公告をなし、その期間(6か月)が経過し、相続人がいないことが確定して初めて特別縁故者による分与請求ができます。
裁判所による判断は裁量に委ねられ、具体的・現実的に存在した被相続人との縁故の濃淡で判断されることになります。
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