給与の税金確定の構造
年末調整においては、給与所得者の提出した扶養控除等申告書などに記載された申告内容に基づいて、事務処理がされます。
その際、扶養親族の該当性の適否判定は記載者本人がするのであって、記載された内容の適否についての調査義務・調査権限は給与の支払者にはありません。
ところで、税務署での調査により、記載内容の適正さに疑問が指摘される場合、給与所得者本人にはその通知は送られず、給与支払者に送られてきます。
扶養控除等申告書の記載を修正させて年末調整をやり直すことを要求してくるのです。
それで、本人が修正に応じ、年末調整がやり直しとなり、不足税額を納付すると、その後不納付加算税や延滞税の追徴がなされます。
給与支払者には落ち度がないのに、このペナルティーは理不尽ですが、多くの場合、不正記載者本人に追徴額の転嫁がされているのではないかと思われます。
不正記載を修正できないときは
不正記載があっても、扶養控除等申告書の記載の修正がない限り、年末調整のやり直しはできませんので、すでに退職してしまった人の場合にはどうすればよいのでしょうか。
給与支払者に特に過失がなく、税額を再計算して徴収し直し、納付することもできない場合には、給与支払者をそれ以上追及しない、との通達があります。
そんな場合に、税務署長が退職した給与所得者本人に対して直接に所得税額の決定をして不足税額とペナルティーの追徴処置をしたという事例がありました。
不正申告者を放置しないとの趣旨ですが、この決定処置は国税不服審判所にて取消しの憂き目に会っています。
なぜかというと、この場合のような給与所得者は「年末調整されるだけで、確定申告をする義務がなく、義務がない者への税務署長の直接的納税強制の決定には法律の根拠がない」ということです。
給与の確定申告不要制度の不備
この事例は、別居母親に月額約10万円程度の家賃相当額を援助していたことから扶養親族として届け出ていたというもので、もし「本人が退職しておらず、税務署の指摘にも応ぜず、税務署長が会社宛に追徴処分をし、会社は本人に転嫁する」というような場合には、誰と誰が争うことになるのか、法の不備ということになりそうです。

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