国外転出時課税制度は、原則として、国外転出時に有する対象資産の含み益に対し、その転出時に納税をしなければなりません。
ただし、国外転出時課税の適用により納付することとなった所得税について、国外転出時までに、「納税管理人の届出書」を提出した方は、一定の要件のもと、国外転出の日から5年を経過する日まで納税が猶予されます。
(1)納税猶予の特例の適用を受けるための手続
① 納税管理人の届出
国外転出の時までに、所轄税務署に「納税管理人の届出書」を提出し、納税管理人を定めておく必要があります。
納税管理人とは、国内に住所を有しない人の確定申告書の提出などの国税に関する事務処理を、その人に代わって行う人のことをいいます。
納税管理人は、国内に住所を有していれば、個人でも法人でもなることができます。
通常は、親族や顧問税理士に依頼する場合が多いようです。
② 確定申告期限(翌年3月15日)
国外転出をした年分の確定申告期限までに、「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等に係る納税猶予分の所得税及び復興特別所得税の額の計算書」など一定の書類を添付した確定申告書を提出し、かつ、納税猶予分の所得税額及び利子税額に相当する担保を提供する必要があります。
担保として提供できる財産は、次のとおりです。
・不動産
・国債・地方債
・税務署長が確実と認める有価証券
・税務署長が確実と認める保証人の保証
③ 納税猶予期間(各年12月31日の翌年3月15日)
納税猶予期間中は、各年12月31日において所有等している適用資産について、適用資産の種類、名称、銘柄別の数量などを記載した「継続適用届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。
提出期限までに提出がなかった場合は、その期限から4か月を経過する日をもって納税猶予期限が確定することとなり、納税が猶予されていた所得税及び利子税を納付することとなります。
④ 納税猶予期限の延長
納税猶予期限を5年延長することができます。
延長するためには、国外転出の日から5年を経過する日までに、「延長届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。
延長後の納税猶予期限は国外転出の日から10年を経過する日となります。
納税猶予のほかに、各種減額措置等がありますが、納税猶予の特例の適用を受けていることが条件となっている減額措置もありますので、国外転出時課税に該当する方は、納税猶予の手続きをすることをお勧めします。

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