大都市部にあるタワーマンションを購入する目的の一つに、相続税の節税効果があります。
相続税法上、相続財産の評価は、原則として「時価」を課税標準としています。
ただし、時価を評価しにくい財産は、財産評価基本通達において評価方法が定められています。
一般的にマンションの相続税評価額は、土地は、敷地全体の価額(路線価方式又は倍率方式)を専有部分の面積で按分し、建物は、固定資産税評価額を用います。
タワーマンションの場合、敷地に対して戸数が多く、一戸当たりの土地の持分は極端に小さくなります。
また、建物の固定資産税評価額は、床面積が同じであれば、階数は低くても高くても考慮されず、評価額は同じになります。
しかし、タワーマンションでは高層階の部屋ほど、市場価格は高値で取引されるため、相続税評価額と市場価格との間に、乖離が生じやすくなります。
その結果、現金預金などの財産を持っているのに比べ、タワーマンションを所有していたほうが、相続税評価額を大幅に圧縮でき、相続税の節税効果が大きくなります。
国税庁が行った、相続税評価額と市場価格との乖離率の実態を把握するためのサンプル調査では、平均約3倍、最大で約7倍もの乖離が出ていました。
例えば、市場価格1億2,000万円のタワーマンションは、相続税評価額は3分の1の4,000万円で申告できることになります。
この「タワーマンション節税」に対して、国税庁は、実質的な租税負担の公平性の観点から看過しがたい事態がある場合には、適正な課税の観点から財産評価基本通達6項の運用を行いたい、としています。
財産評価基本通達6項とは、次のとおりです。
「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」
つまり、財産評価基本通達で定められた方法で評価したとしても、著しく不適当と認められれば、否認されるリスクが潜んでいます。
実際、相続発生前後に売買されたタワーマンションについて、市場価格を相続税評価額とみなして課税された事例もあります。
財産評価基本通達に基づく評価が著しく不適当かどうかは、相続税評価額と市場価額との大きな乖離、マンションの取得時期や目的、使用状況などを総合的に見て、判断するものと思われます。

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