離婚時財産分与と同じ理由
離婚の際に財産分与を受ける場合、財産分与請求権がすでにあれば、「その請求債権の弁済として財産を受け入れているだけだから、受ける側に課税はない」というのと同じ理由で、最高裁は二重課税禁止判決を出しています。
年金も「相続によって年金受給の請求権が相続人に発生したことによって、その請求権が相続税の対象になった以上、その後、年々受け取る年金は、その年金請求権の分割払いによる回収に過ぎないのだから、超過回収分を除き課税はない」ということです。
超過回収分への課税の二つの意味
所得とは、経費をかけて収入を得たときの、投下経費を超過する回収額のことです。これが所得税の対象です。
もともと年金も「年金収入のうち、支払保険料を超過する部分に課税される」ということになっていました。
相続税課税済みの年金請求権の額を超過する回収額、と言うときの超過額は投下経費超過額の意味とは異なります。
前者の意味は二重課税にならないということであり、後者の意味は所得の発生ということです。
二つの超過の重複部分
今年の税制改正で、年金の評価の原則が解約返戻金ベースということになりました。
そうすると、一時払保険料による年金などの場合、相続税評価額よりも支払保険料のほうがずっと高くなることがあり、所得がほとんどない場合もあります。
これで、相続税評価額超過分全部に所得税を課するとなると、所得なきところに課税することになり、不合理です。
投下経費の無視が不合理の源です。
投下経費としての支払保険料は、収入全体を得るための経費であったわけなので、相続税課税済分とその超過分との両方から差し引くべきです。
よって、次の算式となります。
(年金収入-相続税評価額)-年金対応支払保険料按分額=年金所得
10月下旬から還付開始という
9月1日のニュースでは、財務省と国税庁は時効前の5年分を対象に10月下旬から二重課税分の還付を始める方針、のようです。
しかし、ニュースを読む限りでは、国税側の情報としても、マスコミ側の問題意識としても、経費とされている支払保険料についての扱いを示唆しているものは見当たりませんでした。
最高裁の判決も「必要経費の控除に代えて相続税課税済み分を年金収入から控除する」としているわけではないので、経費となる支払保険料を無視することはできません。

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