2つの共同事業要件
法人税の条文に「共同で事業を営むための」という文言が2箇所で使われています。
1つは、組織再編において、適格合併等(分割、現物出資等)を充足するための要件として、
もう1つは、適格組織再編を充足した上で、被合併法人の繰越欠損金の引継及び合併法人等(分割承継法人、被現物出資法人等)の欠損金の利用制限を解除する要件として使われています。
ただ、両者はまったく同意語でないことから、前者を「共同事業要件」、後者を「みなし共同事業要件」と呼んで区別しています。
それぞれの共同事業要件と特定役員
共同事業要件は、支配関係が50%未満の法人間の合併等において、適格性を満たすための要件です。
その要件はいくつかありますが、その1つに、特定役員に関する定めがあります。
一方、みなし共同事業要件の方ですが、支配関係(50%以上)のある適格合併等であっても、
支配関係が5年以上といった一定の要件を満たさなければ、欠損金の引継・利用は制限されます。
しかし、このみなし共同事業の要件(適格現物分配を除く)をクリアすれば、何ら制限なくその引継・利用は認めらます。
そして、このみなし共同事業要件にも、上記の適格のための共同事業要件と同じく「特定役員」に関する定めがあります。
そこで気になるのは、それぞれの共同事業要件に規定されている「特定役員」に違いがあるのか、どうかです。
同じ特定役員でも取扱いに留意
特定役員とは、常務クラス以上の役員またはこれらに準ずる人で経営に従事している人をいいます。
両者に違いはありません。
問題はその取扱いです。
適格の要件としての「特定役員」は、それぞれの法人の特定役員のいずれかが、合併後合併法人の特定役員になることが見込まれることが必要です。
一方、欠損金引継・利用の要件としての「特定役員」は、上記要件に加えて、
被合併法人と合併法人のそれぞれの特定役員は、支配関係発生日前から役員又は役員に準ずる者(経営に従事していた者に限る)でなければならないことになっています。
特定役員の取扱いをうっかり失念して、欠損金の活用を無駄にしたくないものです。
 

当法人は当業務日誌で発信した情報について正確な情報をお伝えするように努力をしますが、誤り・正確さ・取引の正当性などについては、当法人およびその情報提供者は一切の責任を負いません。

記事を読まれた方又は第三者が当該業務日誌に記載されている情報などに基づいて被ったとされるいかなる損害についても、当法人およびその情報提供者は損害賠償その他一切の責任を負担致しません。

記事の内容についてのご質問はお問い合わせのページよりお願いいたします。

ご質問の内容によっては有料でのご対応、もしくはご返答いたしかねる場合がございますので、あらかじめご了承ください。