基本権と支分権とは同じ
最高裁の二重課税禁止判決が否定した高裁の判決は、相続財産になったのは10年分の年金支払請求基本債権であり、所得税が対象とするものは各年の分割年金請求権たる支分権であり、両者には法的性格に異なるところがあるから、同一物への二重課税にはならない、というものでした。税務署の主張の丸呑みで、屁理屈そのものながら、色々な理屈を並べていました。
著作権や営業権などは償却
財産評価通達は特許権や著作権や営業権などについて、相続財産にすることを要求しています。
これらの財産権は最高裁の二重課税判決の対象となった年金基本債権と各年の支分権との関係と基本的に似ています。
将来の何年かに亘り収益の確保に貢献しながら、その収益が得られなくなるに連れて消滅するものだからです。
ただ、収益の確保の契約的確実性が、確定的でないものもある、という相違があります。
従って、これらの相続税課税済み財産の二重課税排除の手法としては、年金の場合と似た数理計算的手法に馴染むものを除いては、無形資産についての減価償却の方法が適切なように思われます。
著作権や営業権などを売却する場合
特許権や著作権や営業権も売却可能な譲渡性資産なので、契約が成立しさえすれば売却による現金化は可能です。
年金受給権については、年金受け取りをやめて一時金で受け取ることを相続時に選択した場合には、「一時所得としての所得税を非課税とする」というのは従来からの扱いでした。
なぜ、一時金のときだけ非課税なのか、年金受け取りでも同じではないか、と言うのが二重課税禁止判決の内容でした。
年金を一時金で受け取るのと同じく、特許権や著作権や営業権を相続開始とともに売却したとしたら、その代金を相続財産の評価額とするとともに、所得税は非課税、ということにしないと、一貫性がないことになります。
また、何年か後に売却した場合も、相続税で課税済みの部分に所得税を課することは、最高裁二重課税禁止判決後としては、同じく一貫性がないことになります。
最高裁判決後は状況が異なる
最高裁は法律の最終解釈権者ですから、その判決で相続税と所得税の二重課税禁止条文の新解釈が出た以上、それを踏まえたその他の条文との整合的な新たな解釈と取扱いが必要になります。

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