輸出証明が取れず「輸出免税」が取消しに
少し前の話になりますが、週刊東洋経済2014年5月17日号に、スマートフォンアプリの開発会社が行った海外顧客向けの売上について、消費税が免除される輸出免税取引に該当せず、課税売上として消費税が課せられた事例が掲載されていました。
この記事によれば、そのアプリ開発会社は有料アプリの販売やアイテム課金で収入を得ていたのですが、海外ユーザー向けアプリ販売の一部について、ユーザーの氏名・住所を記載した「輸出証明」を税務調査で示すことができず、輸出免税が認められなかったようなのです。
グーグル社から情報提供を断られた
このアプリ開発会社は、iOS端末の「アップルストア」、アンドロイド端末の「グーグルプレイ」の2つの販売ルートをもっていました。
このうち、「アップルストア」との取引は国別の地域代理店を通じてアップル社にアプリを納入する事業者間取引(BtoB)であったのに対し、「グーグルプレイ」では、アプリ開発会社が直接ユーザーに販売する取引(BtoC)であったようです(グーグル社からは国別売上高のリポートが出ていたため、これを輸出免税として申告していたのでしょう)。
このBtoCの取引について、アプリ開発会社がグーグル社に対して「ユーザーの氏名・住所」の情報提供を求めたところ、個人情報保護を理由に断られてしまい、税務当局に「輸出証明」を示すことができなかったということのようです。
国境を越えた役務提供の消費課税の今後
おりししも4月には政府税調「国境を越えた役務提供に対する消費課税」の会合と、東京で「OECD消費税グローバルフォーラム」が開催され、クロスボーダーの役務提供の新たな消費税課税のあり方が検討されていました。
現在の日本の消費税法では、「役務の提供が行われた場所が明らかでないもの」は「役務の提供をする者の事務所等の所在地」により国内取引の判定を行っており、仕向地主義(消費地課税主義)が徹底されていない面がありました。
これを国外事業者登録方式など新たな手法を組み入れて「役務の提供を受ける者の住所等」で国内取引の判定を行うという案が出ています。
この考え方を採用すれば、上記の事案は「国外取引」となり、輸出証明の必要もなく、日本側の消費税は課せられないということになるかもしれません。

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