所得税においては、所得者が2人以上いる場合に、これらの者の控除対象扶養親族の取扱については、勤務先に提出する「給与所得者の扶養控除等申告書」に記載されたところによることとされています。
両親が所得者である場合には、お互い話し合って、長男は夫の扶養親族に、長女は妻の扶養親族にするか、あるいは、両親の所得の多寡によって家計全体で最も節税となる扶養親族の帰属を選択するかは、その両親の自由です。(控除対象扶養親族の要件を満たしていることが前提です。)
このように、所得者が2人以上いる場合、同一人をそれぞれの所得者の扶養親族として重複して申告しない限り、どの所得者の扶養親族としても差し支えありません。
(1)別世帯の2人以上の所得者の場合
同じ世帯であれば、だれの扶養親族にするかお互い話し合って決められますが、別世帯だとこの辺がなかなか大変です。
例えば、両親が離婚した場合、元夫が養育費を支払っている限り、その子は、元夫の扶養親族にあたります。
そこで、離婚した両親がそれぞれ勤務先に子を控除対象扶養親族として申告した場合、この重複申告は認められません。
ではいったい、いかなる基準で1人の所得者の控除対象扶養親族と判定するかが問題になります。
(2)税務署の判断
このような、離婚した両親からいずれも自己を扶養親族とする「扶養控除等申告書」の提出があったケースで、税務署は「合計所得金額が大きい元夫の扶養親族に該当する」と判断し、元妻の扶養親族を認めませんでした。
この処分に納得のいかない元妻は異議申し立てをしました。
(3)審判所の判断
元妻の請求を受けた審判所は、次のように判断しました。
「所得税法では、いずれの扶養親族とするかが定められない場合は合計所得金額の多寡で判定するが、本件の場合はそのような事例ではなく、この場合、先に扶養控除等申告書を提出した方の居住者(元妻)の扶養親族とすべきである。」
事実によれば、元妻は平成17年12月に、元夫は平成18年1月にそれぞれ勤務先に扶養控除等申告書を提出していました。
家族関係も複雑になりました。
いつ書類を収受したか、会社にとっても管理責任が問われる時代です。
1.TAINS(平成19-12-27非公開
採決FO-1-307)
(離婚後の扶養控除等申告書提出の効果)
離婚後、婚姻費用及び養育費を負担している父と、日常の起居を共にしている母とが、それぞれの勤務先に長女を扶養親族とする扶養控除等申告書を提出していた場合において、それぞれの勤務先の回答により、請求人の方が元夫よりも先に提出しているものと認め、請求人が長女に係る扶養控除の適用を受けることができると判断された事例(平成18年分所得税の更正処分・全部取消し・平19-12-27裁決)【情報公開法第9条第1項による開示情報】
〔裁決の要旨〕
1 請求人は、夫との離婚後、給与収入と毎月元夫から送金される婚姻費用及び養育費とを合わせて生計を立てていたことからすると、平成18年においては、長女は元夫と別居中であるとはいえ、元夫と同一の生活共同体に属して日常生活の資を共通にしているものと認められることから、長女は請求人だけでなく、元夫とも生計を一にするものに該当する。
2 そうすると、平成18年分において、長女は、所得税法上請求人及び元夫双方の扶養親族に該当する。
3 請求人及び元夫は、いずれも長女を扶養親族として、平成18年分扶養控除等申告書に記載し、それぞれの勤務先に提出していることが認められるところ、請求人の扶養控除等申告書は、勤務先代表者及び請求人の答述等のとおり、平成17年12月中に勤務先に提出されたことが認められ、一方、元夫の扶養控除等申告書はその勤務先の回答書において、同申告書の「給与の支払者受付印」欄にスタンプ押印された、平成18年1月12日に提出されていることから、請求人の方が元夫よりも先に勤務先に提出しているものと認められる。
4 したがって、所得税法第84条第2項及び施行令第219条第2項第1号の規定により、請求人の扶養親族となることから、請求人が長女に係る扶養控除の適用を受けることができる。
5 なお、原処分庁は、施行令第219条第2項第2号の規定により、長女は、平成18年分の合計所得金額が請求人より大きい元夫の扶養親族に該当すると主張するが、同号は、同項第1号の規定によっても、いずれの扶養親族とするかが、定められない場合の規定であり、本件は、同項第1号の規定により判断することとなるため、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
6 以上のことから、本件更正処分は、その全部を取り消すべきである。
 裁決年月日 H19-12-27コード番号 F0-1-307

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