違法性と不当性の有無
国税不服審判所の裁決判断で、「本件取消処分は違法とはいえない」としつつ、「本件取消処分は、不当な処分と評価せざるを得ず」として、更正処分の全部取消しをしたものがあります。
平22年12月1日の裁決例ですが、違法ではないが不当である、との理由で裁決されたものはこの事例のみと言われています。
金銭出納帳がないので青色申告取消し
毎年わずかばかり赤字になる農業所得と、3000万円を超える不動産所得を有する納税者が、毎年10万円の青色申告控除をしていたところ、税務調査において、同族の不動産賃貸&管理会社を係わらせた行為計算に所得税負担の不当減少を結果させるものがあるとして不動産所得を6000万円超の額とする更正処分を受け、それに先立ち、現金出納帳の記帳がないとの理由で青色申告の取消処分をされ、更正処分の通知書には処分の理由の記載がなかった、というのがこの事例の内容でした。
裁決での判断は行為計算に触れず
「税務調査では要求がなかったので提示しなかった仕訳伝票があった」という事実認定の下、「不動産所得に係る事業のほとんどで不動産管理会社を介しており、その収入費用はおおむね定額、かつ、収入の大部分が銀行口座への振込みで、本件伝票のほか、通帳及び領収書等を集計して計算した各年分の所得金額は、十分正確性が担保されていると認められ、帳簿書類の備付け及び記録の不備があるものの、その程度は申告納税に対する信頼性が損なわれているとまではいえない」として本件取消処分は「不当な処分と評価せざるを得ず」とされました。
かくして、青色申告取消しが取り消されたら、理由附記のない更正処分は違法な処分になるので、同族会社との取引の行為計算の判断に踏み込むまでもなく、結論が出てしまいました。
不当をめぐる争いの型
青色取消処分は裁量行為ではありますが、 完全な自由裁量ではなく、覊束裁量として法律に相当程度縛られてのもので、形式的に法令の規定に該当する事実があれば即処分するべきものではなく、法の趣旨や適用の普遍性を踏まえた裁量の合理性が担保されなければなりません。
そういう許容範囲の適正さをめぐる採決や判決の例は、不当性が争点なので、この事例以外にも多々あります。

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