こんな疑問が出された
給与から源泉徴収あるいは特別徴収という名前で天引きしている所得税や住民税を会社が滞納している場合、会社は従業員から預かったお金を使い込んでいるという事になります。
従業員が会社のお金を使い込んだら、横領になり刑事処罰されるのに対し、会社が従業員のお金を使い込んだとしても何も処罰されないのですか?
横領にはならない
税金を滞納することは刑事処罰の対象にはなりません。
確かに源泉徴収所得税、特別徴収住民税は従業員の給料から天引きしたもので預り金の性質がありますが、従業員は税金の納税義務者ではありません。
法律上の納付義務者は会社だからです。
納期までに正しく納めないと会社に不納付加算税や延滞税や延滞金などのペナルティーが発生します。
督促されてもペナルティーを納めなければ会社の財産を差し押さえされることもあります。
延滞の原因が従業員の故意や過失であったとしてもです。
社会保険料も同じ
社会保険料が正しく納められていない場合、従業員に対し直接に納入督促がされることはありません。
税金の滞納の場合と同じく保険料の納入義務は従業員にはありません。
社会保険の適用誤りなどにより長期間の徴収漏れが生じた場合、会社には過去2年に遡及した社会保険料の不足額全額納入が督促されますが、その支払い後の従業員との精算は社会保険料としての天引きにはなりません。
会社が給与から天引きできるのは前月分・当月分の保険料に限定されています。
それ以外の保険料は単なる金銭債権債務としての天引きとされます。
国会での珍奇な政府答弁
横領罪が成立するためには、横領の対象となる「物」があることが前提で、保険料を滞納している事業主においては、資金繰りが悪化しているため、従業員に対して手取り分の給料を支払うために必要な資金をようやく調達しているだけであろうから、(そもそも、従業員給料より源泉徴収されることとなる被保険者負担分の保険料に相当する資金を当初から保有していないのが実態であるため)横領の対象となる物は存在していない、と説明しています。

当法人は当業務日誌で発信した情報について正確な情報をお伝えするように努力をしますが、誤り・正確さ・取引の正当性などについては、当法人およびその情報提供者は一切の責任を負いません。

記事を読まれた方又は第三者が当該業務日誌に記載されている情報などに基づいて被ったとされるいかなる損害についても、当法人およびその情報提供者は損害賠償その他一切の責任を負担致しません。

記事の内容についてのご質問はお問い合わせのページよりお願いいたします。

ご質問の内容によっては有料でのご対応、もしくはご返答いたしかねる場合がございますので、あらかじめご了承ください。