給与・退職金・報酬(以下「給与等」という。)の源泉所得税は、原則、これら給与等の支払った月の翌月10日まで国に納付しなければなりません。
なお、特例として、常時雇用者が10人未満の事業所等では、所轄の税務署に「納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、1月から6月までの期間分は7月10日、7月から12月までの期間分は翌年1月10日までとその納期限が延長されます。
 さらに、この特例適用者が「納期限の特例に関する届出書」を提出すれば、7月から12月まで期間分は翌年1月20日までと納期限がさらに延長されます。
(1)厳しい罰則、不納付加算税
 源泉税の納期限を失念した場合の罰則は、不納付加算税と言って、原則として納付すべき税額の10%です。
「正当な理由」があると認められる場合を除き、わずか1日遅れてもこの税率が適用されます。但し、納税の告知があるまでに自主的に納付すれば5%に軽減されます。
(2)緩和された「正当な理由」
 従来、「正当な理由」には、「うっかり忘れていた」は該当しないとされていましたが、国税庁は、平成12年に「偶発的納付遅延等によるものの特例」を発遣し、「うっかり失念」も一定の条件を具備していれば、「正当な理由」に該当するものとして取り扱ってきました。しかし、この事務運営指針がどの程度徹底されていたかは疑問です。
(3)平成18年の税制改正で法令化
平成18年度の税制改正で、無申告加算税についての要件が緩和されたことに伴い、この不納付加算税の適用要件も緩和されました。その内容は、国税庁が平成12年に発遣した「事務運営指針」とほぼ同様なものです。具体的には、前提として、その直前1年分(特例適用者にあっては、今回の納付の目的となった最終月の直前1年分の月を含む納期に係る分)の国税について、①納税の告知を受けたことがないこと及び②法定納期限後に納付された事実がないことで、かつ、③当該納付係る源泉税が法定申告期限から1月を経過する日まで納付されたものであるとき、不納付加算税は適用しない、というものです。
 やはり、手続規定は、公平性を担保する観点から運営指針ではなく、法律で明記すべきものと考えます。
1.不納付加算税
第67条 源泉徴収等による国税がその法定納期限までに完納されなかつた場合には、税務署長は、当該納税者から、第36条 第1項第2号(源泉徴収による国税の納税の告知)の規定による納税の告知に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし、当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。《改正》平11法010
2 源泉徴収による国税が第36条 第1項第2号の規定による納税の告知を受けることなくその法定納期限後に納付された場合において、その納付が、当該国税についての調査があつたことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知してされたものでないときは、その納付された税額に係る前項の不納付加算税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付された税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額とする。《改正》平11法010
3 第1項の規定は、前項の規定に該当する納付がされた場合において、その納付が法定納期限までに納付する意思があつたと認められる場合として政令で定める場合に該当してされたものであり、かつ、当該納付に係る源泉徴収による国税が法定納期限から1月を経過する日までに納付されたものであるときは、適用しない。
2.国税通則法施行令27条の2第2項
2 法第67条第3項(不納付加算税)に規定する法定納期限までに納付する意思があつたと認められる場合として政令で定める場合は、同項に規定する納付に係る法定納期限の属する月の前月の末日から起算して1年前の日までの間に法定納期限が到来する源泉徴収による国税について、次の各号のいずれにも該当する場合とする。
1.法第36条第1項第2号(納税の告知)の規定による納税の告知(法第67条第1項ただし書に該当する場合における納税の告知を除く。)を受けたことがない場合
2.法第36条第1項第2号の規定による納税の告知を受けることなく法定納期限後に納付された事実(その源泉徴収による国税に相当する金銭が法定納期限までに法第34条の3の規定により納付受託者に交付されていた場合及び法第67条第1項ただし書に該当する場合における法定納期限後に納付された事実を除く。)がない場合《追加》平18政132《改正》平19政089
3.国税庁の平成12年発遣「事務運営指針」不納付加算税の取扱(偶発的納付遅延等によるものの特例)は、廃止となりました。

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