自動車事故、航空機事故、海難事故、企業災害などによる人身事故で死亡したときの損害賠償金をめぐる課税関係を整理してみました。
損害賠償金の支払われるまでの態様
損害賠償金については、次の2つのケースが考えられます。
① 損害賠償請求が係争になっていて、その決着がつかないまま遺族に係争が引き継がれた場合
② その支払いの請求を遺族が行った場合
相続税は課税が基本
財産評価基本通達をみると、訴訟中の権利の価額は適正に評価するものとしているので、課税を基本原則に置いているようにみえます。
しかし、被害者本人の利益のための係争の部分と遺族の利益のための係争の部分が交錯もしています。
保険金の場合も同じ
損害賠償金を構成する内容には、死亡した被相続人に発生した損害賠償請求権を相続したと解される部分と、遺族の固有の権利として、遺族に原始的に発生したと解される部分とが併存しています。
遺族固有の権利部分は、当然に相続財産を構成しないし、所得税非課税の規定の適用もあります。
相続取得分と解される部分について相続税を課税するとなると、按分が必要となりますが、按分はいつでも容易にできるとは限りません。
保険金の場合とのアンバランス
死の代償としての金銭という意味では保険金と変わりませんが、保険金についてはあるような相続人一人当たり 500 万円非課税の規定の適用が損害賠償金にはなくバランスを失しています。
課税実務は相続税非課税
そんな問題を避けるためか、損害賠償金のうち被相続人について生じたと解される部分は全体の中では副次的部分にすぎず、「これを無視したとしても特に課税上弊害があると考えられない」との趣旨で全部を遺族固有の慰謝料・損害賠償金との扱いをしています。
相続税非課税ということです。
すでに現金を手にした人とのバランスは失しますが、損害賠償金への課税が国民感情にそぐわないとの判断が優先しているように見受けられるところです。

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