二転三転の適用拡大案
以前よりパートタイマーの社会保険適用については、企業負担の面から批判が多く、実現には至りませんでした。
政府の社会保障と税の一体改革で当初出した案では、週20時間以上働くパート労働者370万人を適用する目標を掲げていましたが、この案が適用されると、5400億円の企業負担が生じることから反対の声が大きく、中小企業は当面見送ることとし、対象人数を減らすことになりました。
最終案は、まずは従業員501人以上の企業で働く45万人を対象として適用とするとしました。
対象者は勤務時間が週20時間、年収94万円以上、雇用期間1年以上のパートタイマーです。
2016年4月から適用し、3年以内に追加拡大の方向です。
現行制度はどうなっているか
現在社会保険の加入対象者となるパート労働者は、労働時間が週30時間以上、年収130万円以上となっていて、同じ企業で働く社員の概ね4分の3以上の労働時間を働く人が対象になります。
したがって加入対象者は、労働時間がフルタイムに近い人に限られていましたが、週20時間となると適用者はかなり増えることなりそうです。
費用負担と給付の公平性
現在の社会保険標準報酬月額の下限は98千円です。
この場合の保険料負担は月額約16,000円(会社負担1/2)で国民年金保険料の月額約15,000円と近い額です。
しかし適用拡大で給料がこれより低い人も加入し、下限が78,000円となると、月額13,000円の負担をするだけで、、基礎年金と月額約17,000円の厚生年金がもらえます。
国民年金加入者は月額約15,000円払い続けても基礎年金しかもらえません。
これでは公平性に欠けると思えます。
また、公平性を考えるなら、自分では保険料を支払わない専業主婦層(第3号被保険者)が基礎年金を受給し、低収入で国民年金保険料が払えない人が無年金や低年金になるであろう問題が残ります。
今までパート年収130万円未満で働き、保険料負担をしていなかった人が、新たに94万円の壁ができるとなると、労働時間を調整していた主婦の働き方に影響を及ぼすと思われます。
 

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