デリバティブ取引と時価評価
デリバティブ取引は、将来の一定の期日に、一定の権利または義務を生じさせる効果をもたらす契約であり、決済があるまでは資金のやり取りは行われないことから、従来は、会計上及び税務上、決済までその損益を計上することはありませんでした。
しかしながら、デリバティブ取引は、その基礎数値の変化によりその保有者に帰属する利益または損失が生じるものであり、決済日前の一定時点にあっても、通常そのときの価値、すなわち時価が存在します。
現行の会計基準、法人税法の規定では、原則、期末時に保有するデリバティブがあれば、そのデリバティブを時価で評価し、その評価差額を当期の損益に計上することを定めています。
税務調査で要注意
中小企業では、その取引がデリバティブ取引であることすら意識していないこともままあります。
税務調査で、デリバティブ取引の存在とその時価評価及び評価益の計上を指摘されると、まったく予期していない分、対応しきれません。
決算に際して、デリバティブ取引の時価の存在を確認し、評価益の発生の有無を把握する必要があります。
以下、設例でそのプロセスを確認してみます。
会社の決算は9月末、以下の条件で国債の先物取引を行う。
・9月20日 取引単位30枚 30億円(約定代金)
 (仕訳)    なし
・9月20日 先物証拠金 4,000万円(支払)
(仕訳) 先物証拠金/預金 4,000
・9月20日 売約定価格  80.5円(12月満了)
 (仕訳)    なし
・9月30日 決算日の先物価格79.5円
 (仕訳)債券先物資産/先物評価益3,000
※本設例の場合、約定価格80.5円に対して決算日の時価が79.5円となり決算日に反対売買すれば100円につき1円の利益が発生することになります。
(80.5円-79.5円)÷100円×30億円=3,000万円
・10月1日(翌期首)3,000万円洗替えする
 (仕訳)先物評価益/債券先物資産 3,000
・11月20日反対売買時の先物価格78.5円(入金)
(仕訳)預金1億 /先物証拠金  4,000
           /先物取引売却益6,000
※買約定によって反対売買を行うと差金決済によって利益(80.5円-78.5円)÷100円×30億円=6,000万円)が確定します。

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