ほんの十数年前までは、株式と言えば「額面株式」と「無額面株式」があるぐらいで、その株式にどんな違いがあるかと言えば、株券に券面額があるかないかの違いで、株式に内在する権利、①配当金をもらう権利(配当受領権)、②株主総会に参加する権利(議決権)、③会社が解散・清算した場合に残った財産をもらう権利(残余財産分配請求権)などには違いはありませんでした。
あえて、株式の権利に違いがある株式が存在していたと言えば、それは、「譲渡制限株式」くらいです。
しかし、その株式も譲渡の制限があるだけで、上記3つの権利は,欠けることなく持っていました。
したがって、「普通株」という名の株式は存在しませんでした。
(1)普通株の存在
しかし、その後、旧商法時代においても権利の内容を異にする株式、優先株(配当を優先的にもらう権利のある株式)、劣後株(配当より経営権を優先する株式)、議決権制限株、拒否権付株(黄金株、全議案に拒否権)などの発行が容認され、会社法になってからは、さらに多様な権利の内容の異なる株式、いわゆる種類株式の発行が定款変更によっていつでも可能になりました。
そこで、普通株の存在は、上記3つの権利を何ら制約なく行使できる株式を「普通株」と呼び、それ以外の株式との違いを明らにすることにあったようです。
株式市場で売買されている株、そして、未上場の中小企業の株のほとんどがこの「普通株」です。
(2)種類株式発行の目的
上場会社にあっては、種類株式発行の目的はファイナンス(資金調達)です。
一方、中小企業にとっては、オーナー社長の相続対策、あるいは、後継者の経営権確保を目的に発行されます。
しかし、議決権制限株、拒否権付株といった種類株を発行しなければ経営権がスムーズに移譲できないことの方が問題かもしれません。
(3)種類株式の相続・贈与の評価
一定の種類株式については、5%相当額の評価減があります。
しかし、減額したその5%相当額は、それ以外の株式(普通株を含む)の評価額に加算して評価しますので株式全体の評価額は変わりません。
なお、拒否権付株式(黄金株)は、普通株式とその評価に差異はありません。

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